エンジニアが映画「AI崩壊」観て辛口ツッコミ!【にどねシネマ】

2020/08/08

にどね 男飲み映画レビュー

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いやあ、テクノロジーを題材にした映画は職業柄どうしても観ちゃいます。にどねです。


今回は大沢たかお主演で話題になった「AI崩壊」を観ました!
少し前にブルーレイ&DVDも発売されましたね~。



2030年を舞台に、医療、インフラと日本人の生活に欠かせない技術へと進化したAIが突如暴走し、
大沢たかお演じる天才AI研究者の桐生浩介にテロ容疑がかけられるという、本格SF逃走劇です。



そう遠くない未来の技術を描いた作品ということで、
学生時代に画像認識の論文を発表したこともある現役エンジニアのにどねが、辛口チェックしたいと思います!

しっかりと取材を重ねたことが伺えるAI技術描写

実はこの映画、『キングダム』や『22年目の告白』の入江悠監督が完全オリジナル脚本を手掛けていて、

監督自身が人工知能学会に入会し、大学教授や電機メーカーのエンジニアに取材を重ねたそうです。


確かに、街中をする桐生を追いかける画像認識技術は
  • 顔識別 (facial recognition)
  • 服装など全身情報での人体識別 (re-identification)
  • 歩き方による識別 (gait recognition)
など、現実に研究が進められている技術が用いられている描画がみられます。
そして、街中のありとあらゆるカメラ(監視カメラ、車載カメラ、スマホ)が桐生の居場所をリアルタイムに探しだしていきます。

一見、桐生には為す術もないと思いきや、アルゴリズムを知っているAIエンジニアらしく、
口元を隠したり(顔識別の典型的な苦手パターンです)、
服装を変えたりすることによってなんとかかいくぐろうとするのです。

このあたりは本当に今の技術レベル感を想定しているように思えます。

さらに、セリフには「LSTM」や「RNN」のようなディープラーニング手法の用語も登場しますし、
劇中で表示されるプログラムはPythonというAI分野でよく使われるプログラミング言語のようにみえます。

たまにSF映画でハッカーがただのコマンドのヘルプ画面を出してるだけのときとかありますからね!?
そういう意味ではちゃんと細かいところも作り込んでいると言えるかもしれません。

もしあなたがPythonを使えるプログラマなら、
最終シーンの壁にプログラムが投影されているところのプログラムに注目してみてください。
なかなかに怖い内容のプログラムが書かれています!!!
(def singularity: ~ とか書かれていますよ…!)

システム設計がお粗末すぎる問題


序盤は結構納得感あるんですよね~

ただ、中盤からは「え…それはさすがにシステム設計上のミスじゃない…?」という展開もちらほら。

AIにサーバールームに閉じ込められるとか、大事な医療システムの暴走が許されてるとか、
さすがに人間が緊急脱出できる仕組みとか二重の安全システムを作ると思うんですよね。。

一番ありえないと思ったのは、
AIシステム自体のセキュリティがユルユルという…。
AIシステムに侵入できるとかじゃなくて、危なくて普通じゃちょっと考えにくい機能がついちゃってます。

ストーリーに関わることなのであまり詳しく言及しないですが、
仮に何かのソフトウェアなら重大なセキュリティホールとされても仕方ない”穴”があるのです…。

AIを使う警察組織のリテラシーやばすぎ問題


これはSF映画なので、まあそういう展開でも仕方ないのかなという気がしなくもないですが、

警察組織が自ら市民が所有するカメラをハックしまくって桐生を追いかけているのは気になります。

もう市民のプライバシーとか無いし、警察が勝手に市民の端末にアクセスして情報取れちゃうなんて、
これ本当に日本なのか…?という気持ちもしちゃいました。
もうちょっと合法的なやり方で捜査してほしかった…。

一歩間違えるとこういうことができちゃうんだから、
気をつけようねというメッセージとして受けましょう。
AIに使われる警察の画像

主人公めちゃくちゃ運がいい問題

もはや技術の話とか関係ないですが、
逃走劇として観たときに、主人公の桐生のラック(運)が高すぎる気もするんですよね
(うーん、これは映画あるあるかもしれないけれども)
運がいい人の画像


流石に、これは命に関わるでしょ…という行動でもなんやかんや生き延びれちゃうし、
なかなかの距離をあの最先端AIの追ってを振り切って逃走しちゃいます。

あれだけ技術が進歩し、警察も超法規的捜査をしているというのに、
終盤まで普通に元気に生きれているの、ちょっとしぶとすぎやしませんかね。

いやだって、事件前までは天才とはいえ身体能力普通なパパですよ?
ダイハードもびっくりの高生存能力を発揮する桐生を観ることができます…

”やり過ぎ感”があるけども、メッセージある作品


と、いうことでストーリー構成上なのか、ちょっと色々とやり過ぎている感が感じられましたが、

AI技術に関する描写は、熱ある取材の跡を感じさせてくれますし、
今話題で進歩も早いAI技術をどう使われるべきなのか、どんなリスクを抱えているのか、
という面のメッセージは非常に伝わってきます。

個人的には、AIって怖いものだと思わせかねない部分もあるので少々心配ですが、
端々にちゃんとした技術描写を伺わせてくれるため、デタラメなAI映画ではないのです。

ちなみに、主題歌をAIさんが歌われているのは、やっぱりAI繋がりですかね…??

少し辛めにツッコミかましてみましたが、気になったら観てみてくださいね!
にどねでした。

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